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多焦点眼内レンズが先進医療から除外されていた

 がん治療の高額な「先進医療」(公的医療保険適用外)を受けるため、生命保険(任意)に加入し「先進医療特約」を付けている方も多いと思います。この先進医療は、将来的に公的医療保険を適用するかどうか見極めるため、試験的に導入されているもので、試験期間を経た後は、①公的医療保険を適用する、②適用せずに先進医療から外す、どちらにするか、厚生労働省が中央社会保険医療協議会の意見を聞いて決めることになっています。

 白内障の治療(眼内レンズを用いた水晶体再建術)には、公的医療保険適用の単焦点レンズのほかに、先進医療の多焦点レンズがありましたが、2020年4月、この多焦点レンズが先進医療から外されていました。

 先進医療から外されると、「先進医療特約」にも該当しないので、正真正銘の自費負担です。

 多焦点レンズを用いた水晶体再建術は、2008年7月から先進医療の対象となりました。単焦点と違って、遠くも近くも見え、眼鏡がいらなくなるのが特徴です。実は、私もこのレンズを使って2013年に手術をしました。個人差もあるようですが、強度の近視だった私は手術後、眼鏡もコンタクトレンズも必要なくなりました。

 そのときの費用(35万円×2眼)は幸運にも「先進医療特約」が適用され、自己負担セロでした。

 人類の寿命が延び、高齢者が増え、白内障を患う人も、老眼に悩む人も少なくなることはありません。

 白内障と同時に老眼も治療できる多焦点レンズは患者にとって「有効」ですが、厚労省の決定は「無効」でした。

 どうして?

 最も大きな理由は、先進医療の中で施術件数が年間2万件以上と圧倒的に多かったことです。施術可能な指定病院の数も多く、私も近所の眼科で日帰りで手術を受けることができました。しかし、患者が多くて困るのは保険会社です。保険金の支払いが大きな負担となったのです。これでは、公的医療保険を適用することもできません。結局、保険適用にするか否か、患者ではなく、公的医療保険の保険者や保険会社の懐具合(財政)を見て決められたのです。

 ところで、多焦点レンズの仕組みですが、コンタクトレンズの同時視型と同じで、遠くと近くの2つの像を取り込み、焦点の合っている方を「脳」が選択します。私は2焦点を使っていますが、3焦点レンズもあります。